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チョッとひと息
V  279特許の概要
(2007.7.27)
 
 
 ここでは、特許権侵害訴訟の根拠となっている279特許の請求項1について検討する。279特許で定義されている請求項は2つあり(いずれも独立項)、請求項1について以下で分説する。
 
(1)279特許の権利範囲(請求項1)
 279特許の請求項1は、以下のような記載となっている。なお、A、B等の符号を付した分割表記は、弊所の手によるものである。279特許の請求項1は、「給与支払いシステム」の構成を定義するものである。788特許がインタフェース(B1)、記憶装置(B2)、および処理装置(B3)の各構成要素を有する銀行コンピュータ(B)により構成されていたのに対し、279特許は、銀行コンピュータ(B)と資金交付管理コンピュータ(B’)によってシステムが実現される。279特許の請求項1の記載は、788特許と共通する部分が多いので、以下の表では、788特許と異なる記載となっている部分を色付き表示で示すことにする。
 
労働者が雇用者に対して労働を提供することで順次累計される給与を、予め設定された給与日、及び前記給与日前であって労働者の希望する任意のタイミングにおいて支払う給与支払いシステムであって、
・A 該給与支払いシステムは、銀行口座にアクセスして引落処理及び振込処理を実行する銀行コンピュータ及び資金交付管理コンピュータを有し、
・B 該銀行コンピュータは、
 B1 データを入力するインタフェース、及び
 B2 前記インタフェースに接続された記憶装置、及び
 B3 前記記憶装置に記憶されたファイルにアクセスしてデータ処理するとともにデータ処理結果前記インタフェースから入力されたデータに応じて前記引落処理及び振込処理を実行する処理装置を有し、
・B' 該資金交付管理コンピュータは、
 B'1 データを入力するインタフェース、
 B'2 前記インタフェースに接続された記憶装置、及び
 B'3 前記記憶装置に記憶されたファイルにアクセスしてデータ処理する処理装置を有し、
・C 前記資金交付管理コンピュータの前記インタフェースは、
 C1 労働者端末から送信された、前記労働者が前記雇用者に対して労働を提供した後でかつ前記給与日前の任意の日を指定する希望日データ及びにおいて任意金額の資金データを含む資金交付希望データを入力するとともに、
 C2 前記労働者の労働状況を管理するコンピュータから送信された、前記労働者の労働が提供される毎の労働データを入力し、
・D 前記資金交付管理コンピュータの前記記憶装置は、
 D1 前記給与日と、前記インタフェースから入力された前記労働者の労働データを格納する労働データ管理ファイルと、
 D2 前記労働データに基づき順次算出された前記労働者の任意タイミングにおける累計給与データ及び前記労働者に資金交付された金額データを格納する給与データ管理ファイルと、
 D3 前記インタフェースから入力された希望日データ及び任意金額の資金データを格納する資金データ管理ファイルとを記憶し、
・E 前記資金交付管理コンピュータの前記処理装置は、
 E1 前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルの希望日データにより指定前記資金交付希望データにより設定される日に、
  E1a 前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルにアクセスして前記労働者の資金データで特定される金額を取得するとともに、前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記希望日データにより指定される日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記資金データで特定される金額と前記残余の給与金額とを大小比較する比較処理を実行し、
  E1b 前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲内である場合に、前記銀行コンピュータに対して振込データを送信し、前記銀行コンピュータの前記処理装置は前記振込データに応じて前記労働者の口座に対して前記資金データで特定される金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記資金データで特定される金額の引落処理を実行し、
  E1c 前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲を超える場合に、前記振込処理を拒否する処理を実行し、又は、前記銀行コンピュータに対して振込データを送信し、前記銀行コンピュータの前記処理装置は前記振込データに応じて前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行し、
  E1d 前記給与データ管理ファイルの前記資金交付された金額データを更新し、かつ、
 E2 前記資金交付管理コンピュータの前記記憶装置に記憶された給与日に、
  E2a  前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記給与日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出して前記銀行コンピュータに対して振込データを送信し、前記銀行コンピュータの前記処理装置は、前記振込データに応じて前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行する、
ことを特徴とする給与支払いシステム。
 
(2)給与支払いシステム(請求項1)の処理概要
 次に、請求項1で定義された給与支払いシステムの概要を、下の図を参照して分かり易く解説する。ここでは、システムを理解し易いように、システムの各処理を簡略化された図と、多少かみ砕いた表現で説明するが、実際の権利範囲の認定は、あくまでも「特許請求の範囲」の記載に基づいて行われる。
東京都民銀行システム
 
・給与支払いシステムは、インタフェース(B1)、および処理装置(B3)を備えた銀行コンピュータ(B)と、インタフェース(B’1)、記憶装置(B’2)、および処理装置(B’3)の各構成要素を備えた資金交付管理コンピュータ(B’)を有している。
◆資金交付管理コンピュータ(B’)の記憶装置に記憶される内容
・記憶装置(B’2)には、労働データファイル管理ファイル(D1)、給与データ管理ファイル(D2)、資金データ管理ファイル(D3)が記憶される。
・労働データ管理ファイル(D1)には、労働者の給与日と、労働者が提供した労働を(提供ごとに)表す労働データが格納される。
・給与データ管理ファイル(D2)には、労働データに基づいて順次算出された累積給与データと、労働者にすでに交付されている金額を表す金額データが格納される。
・資金データ管理ファイル(D3)には、労働者が振込を希望する金額を表す資金データが格納される。788特許では、労働者が指定した希望日を表す希望日データも格納されていたが、この記載はなくなった。
◆労働者からの振込金額等の指定
・労働者は、携帯電話やパソコンなどの労働者端末から、資金データを含む資金交付希望データを送信すると、このデータが、インタフェース(B’1)を介して資金交付管理コンピュータ(B’)に入力され、資金データ管理ファイル(D3)に格納される。
◆労働データの管理
・労働者が提供した労働を表す労働データは、インタフェース(B’1)を介して資金交付管理コンピュータ(B’)に入力され、このデータが、労働データ管理ファイル(D1)に格納される。788特許では、このデータが、労働状況を管理するコンピュータから送信されていたが、この記載がなくなった。
◆資金交付希望データで設定される日における処理
・資金交付管理コンピュータ(B’)の処理装置(B’3)は、
 −希望日時点で資金交付可能な金額を、すでに交付済みの金額データと累積給与データとから求め、労働者が振込を希望する資金データの金額が、この交付可能な金額の範囲内かどうかをチェックし(E1a:交付可否チェック処理)、
 −範囲内である場合、銀行コンピュータ(B)に振込データを送信して、銀行コンピュータ(B)が、労働者の口座に希望金額を振り込むとともに雇用者口座から対応する金額を引き落とすようにし(E1b:希望金額振込・引落処理)、
 −範囲を超える場合、希望金額の振り込みを拒否するか、又は、銀行コンピュータ(B)に振込データを送信して、銀行コンピュータ(B)が、交付可能な金額を振り込むとともに雇用者口座から対応する金額を引き落とすようにし(E1c:希望金額振込拒否処理)、
 −今回の振込分を給与データ管理ファイル(D2)の金額データに反映させる(E1d:金額データ更新処理)。
◆給与日における処理
・資金交付管理コンピュータ(B’)の処理装置(B’3)は、
 −銀行コンピュータ(B)に振込データを送信して、銀行コンピュータ(B)が、累積給与データのうち、資金交付されていない金額を労働者の口座に振り込むとともに、雇用者口座から対応する金額を引き落とすようにする(E2a:残余金額振込・引落処理)。
 
(3)279特許の権利範囲(請求項2)
 279特許の請求項2は、以下のような記載となっている。なお、A、B等の符号を付した分割表記は、弊所の手によるものである。279特許の請求項2は、請求項1と同様、「給与支払いシステム」の構成を定義するものである。279特許の請求項2の記載は、請求項1と共通する部分が多いので、以下の表では、請求項1の記載と異なる部分を色付き表示で示すことにする。
 
労働者が雇用者に対して労働を提供することで順次累計される給与を、予め設定された給与日、及び前記給与日前であって労働者の希望する任意のタイミングにおいて支払う給与支払いシステムであって、
・A 該給与支払いシステムは、銀行口座にアクセスして引落処理及び振込処理を実行する銀行コンピュータ及び資金交付管理コンピュータを有し、
・B 該銀行コンピュータは、
 B1 データを入力するインタフェース、及び
 B3 前記インタフェースから入力されたデータに応じて前記引落処理及び振込処理を実行する処理装置を有し、
・B' 該資金交付管理コンピュータは、
 B'1 データを入力するインタフェース、
 B'2 前記インタフェースに接続された記憶装置、及び
 B'3 前記記憶装置に記憶されたファイルにアクセスしてデータ処理する処理装置を有し、
・C 前記資金交付管理コンピュータの前記インタフェースは、
 C1 労働者端末から送信された、前記労働者が前記雇用者に対して労働を提供した後でかつ前記給与日前の任意の日において任意金額の資金データを含む資金交付希望データを入力するとともに、
 C2 前記労働者の労働が提供される毎の労働データを入力し、
・D 前記資金交付管理コンピュータの前記記憶装置は、
 D1 前記給与日と前記労働者の労働データを格納する労働データ管理ファイルと、
 D2 前記労働データに基づき順次算出された前記労働者の任意タイミングにおける累計給与データ及び前記労働者に資金交付された金額データを格納する給与データ管理ファイルと、
 D3 前記任意金額の資金データを格納する資金データ管理ファイルとを記憶し
 D4 労働者の1日当たりの所定の資金交付可能金額データを格納するファイルを記憶し、
・E 前記資金交付管理コンピュータの前記処理装置は、
 E1 前記資金交付希望データにより設定される日に、
  E1’a 前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルにアクセスして前記労働者の資金データで特定される金額を取得するとともに、前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記資金データで特定される金額と前記残余の給与金額と労働者の前記1日当たりの所定の資金交付可能金額データで特定される金額に前記労働者の労働日数を乗じて得られる金額を大小比較する比較処理を実行し、
  E1’b 前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の1日当たりの所定の資金交付可能金額データで特定される金額に前記労働者の労働日数を乗じて得られる金額の範囲内である場合に、前記銀行コンピュータに対して振込データを送信し、前記銀行コンピュータの前記処理装置は前記振込データに応じて前記労働者の口座に対して前記資金データで特定される金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記資金データで特定される金額の引落処理を実行し、
  E1’c 前記資金データで特定される金額が 前記残余の給与金額の1日当たりの所定の資金交付可能金額データで特定される金額に前記労働者の労働日数を乗じて得られる金額の範囲を超える場合に、前記振込処理を拒否する処理を実行し、又は、前記銀行コンピュータに対して振込データを送信し、前記銀行コンピュータの前記処理装置は前記振込データに応じて前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行し、
  E1d 前記給与データ管理ファイルの前記資金交付された金額データを更新し、かつ、
 E2 前記資金交付管理コンピュータの前記記憶装置に記憶された給与日に、
  E2a  前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記給与日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出して前記銀行コンピュータに対して振込データを送信し、前記銀行コンピュータの前記処理装置は、前記振込データに応じて前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行する、
ことを特徴とする給与支払いシステム。
 
(4)給与支払いシステム(請求項2)の処理概要
 次に、請求項2で定義された給与支払いシステムの概要を、下の図を参照して分かり易く解説する。ここでは、システムを理解し易いように、システムの各処理を簡略化された図と、多少かみ砕いた表現で説明するが、実際の権利範囲の認定は、あくまでも「特許請求の範囲」の記載に基づいて行われる。
東京都民銀行システム
 
・給与支払いシステムは、インタフェース(B1)、および処理装置(B3)を備えた銀行コンピュータ(B)と、インタフェース(B’1)、記憶装置(B’2)、および処理装置(B’3)の各構成要素を備えた資金交付管理コンピュータ(B’)を有している。
◆資金交付管理コンピュータ(B’)の記憶装置に記憶される内容
・記憶装置(B’2)には、労働データファイル管理ファイル(D1)、給与データ管理ファイル(D2)、資金データ管理ファイル(D3)、およびファイル(D4)が記憶される。
・労働データ管理ファイル(D1)には、労働者の給与日と、労働者が提供した労働を(提供ごとに)表す労働データが格納される。
・給与データ管理ファイル(D2)には、労働データに基づいて順次算出された累積給与データと、労働者にすでに交付されている金額を表す金額データが格納される。
・資金データ管理ファイル(D3)には、労働者が振込を希望する金額を表す資金データが格納される。788特許では、労働者が指定した希望日を表す希望日データも格納されていたが、この記載はなくなった。
・ファイル(D4)は、労働者の1日当たりの所定の資金交付可能金額データが格納される。このファイルは請求項1にはないファイルである。
◆労働者からの振込金額等の指定
・労働者は、携帯電話やパソコンなどの労働者端末から、資金データを含む資金交付希望データを送信すると、このデータが、インタフェース(B’1)を介して資金交付管理コンピュータ(B’)に入力され、資金データ管理ファイル(D3)に格納される。
◆労働データの管理
・労働者が提供した労働を表す労働データは、インタフェース(B’1)を介して資金交付管理コンピュータ(B’)に入力され、このデータが、労働データ管理ファイル(D1)に格納される。788特許では、このデータが、労働状況を管理するコンピュータから送信されていたが、この記載がなくなった。
◆資金交付希望データで設定される日における処理
・資金交付管理コンピュータ(B’)の処理装置(B’3)は、
 −労働者が振込を希望する資金データの金額が、労働者の1日当たりの資金交付可能データで特定される金額に労働日数を乗じて得られる金額の範囲内かどうかをチェックし(E1’a:交付可否チェック処理)、
 −範囲内である場合、銀行コンピュータ(B)に振込データを送信して、銀行コンピュータ(B)が、労働者の口座に希望金額を振り込むとともに雇用者口座から対応する金額を引き落とすようにし(E1’b:希望金額振込・引落処理)、
 −範囲を超える場合、希望金額の振り込みを拒否するようにし(E1’c:希望金額振込拒否処理)、
 −今回の振込分を給与データ管理ファイル(D2)の金額データに反映させる(E1d:金額データ更新処理)。
◆給与日における処理
・資金交付管理コンピュータ(B’)の処理装置(B’3)は、
 −銀行コンピュータ(B)に振込データを送信して、銀行コンピュータ(B)が、累積給与データのうち、資金交付されていない金額を労働者の口座に振り込むとともに、雇用者口座から対応する金額を引き落とすようにする(E2a:残余金額振込・引落処理)。
 
(5)279特許取得の狙い
 279特許については、三菱東京UFJ銀行による「SOッCA」のサービス開始を報じる記事の掲載日に審査請求がされている。これが偶然でなければ、279特許の権利化は、このサービスを、788特許より効果的に排除しようとする意図で行われた可能性がある。そうだとすれば、特許請求の範囲において、788特許と異なる点を見れば、その意図がはっきりするかもしれない。
 
 特許請求の範囲における相違点からは、少なくとも2つのヒントが見いだせる。
  ・2つのコンピュータ
  ・不要なデータ(他社サービスのコンピュータシステムが使用していないもの)