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チョッとひと息
U  788特許の概要
(2007.7.27)
 
 
 ここでは、特許権侵害訴訟の根拠となっている788特許の請求項1について検討する。788特許で定義されている請求項は1つのみであり、以下で分説する。また、本件特許権は、拒絶査定不服審判を経て登録されている。
 
(1)788特許の権利範囲
 788特許の請求項1は、以下のような記載となっている。なお、A、B等の符号を付した分割表記は、弊所の手によるものである。788特許の請求項1は、「給与支払いシステム」の構成を定義するものであり、インタフェース(B1)、記憶装置(B2)、および処理装置(B3)の各構成要素を有する銀行コンピュータ(B)により構成される。インタフェース(B1)は、C1、C2の機能を実現し、記憶装置(B2)はD1〜D3の各ファイルを記憶し、処理装置(B3)は、E1(E1a〜E1d)、E2(E2a)の機能を実現する。
 
労働者が雇用者に対して労働を提供することで順次累計される給与を、予め設定された給与日、及び前記給与日前であって労働者の希望する任意のタイミングにおいて支払う給与支払いシステムであって、
・A 該給与支払いシステムは、銀行口座にアクセスして引落処理及び振込処理を実行する銀行コンピュータを有し、
・B 該銀行コンピュータは、
 B1 データを入力するインタフェース、
 B2 前記インタフェースに接続された記憶装置、及び
 B3 前記記憶装置に記憶されたファイルにアクセスしてデータ処理するとともにデータ処理結果に応じて前記引落処理及び振込処理を実行する処理装置を有し、
・C 前記インタフェースは、
 C1 労働者端末から送信された、前記労働者が前記雇用者に対して労働を提供した後でかつ前記給与日前の任意の日を指定する希望日データ及び任意金額の資金データを入力するとともに、
 C2 前記労働者の労働状況を管理するコンピュータから送信された、前記労働者の労働が提供される毎の労働データを入力し、
・D 前記記憶装置は、
 D1 前記給与日と、前記インタフェースから入力された前記労働者の労働データを格納する労働データ管理ファイルと、
 D2 前記労働データに基づき順次算出された前記労働者の任意タイミングにおける累計給与データ及び前記労働者に資金交付された金額データを格納する給与データ管理ファイルと、
 D3 前記インタフェースから入力された希望日データ及び任意金額の資金データを格納する資金データ管理ファイルとを記憶し、
・E 前記処理装置は、
 E1 前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルの希望日データにより指定される日に、
  E1a 前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルにアクセスして前記労働者の資金データで特定される金額を取得するとともに、前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記希望日データにより指定される日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記資金データで特定される金額と前記残余の給与金額とを大小比較する比較処理を実行し、
  E1b 前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲内である場合に、前記労働者の口座に対して前記資金データで特定される金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記資金データで特定される金額の引落処理を実行し、
  E1c 前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲を超える場合に、前記振込処理を拒否する処理を実行し、又は、前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行し、
  E1d 前記給与データ管理ファイルの前記資金交付された金額データを更新し、かつ、
 E2 前記記憶装置に記憶された給与日に、
  E2a  前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記給与日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行する、
ことを特徴とする給与支払いシステム。
(2)給与支払いシステムの処理概要
 次に、請求項1で定義された給与支払いシステムの概要を、下の図を参照して分かり易く解説する。ここでは、システムを理解し易いように、システムの各処理を簡略化された図と、多少かみ砕いた表現で説明するが、実際の権利範囲の認定は、あくまでも「特許請求の範囲」の記載に基づいて行われる。
東京都民銀行システム
 
・給与支払いシステムは、インタフェース(B1)、記憶装置(B2)、および処理装置(B3)の各構成要素を備えた銀行コンピュータ(B)を有している。
◆記憶装置に記憶される内容
・記憶装置(B2)には、労働データファイル管理ファイル(D1)、給与データ管理ファイル(D2)、資金データ管理ファイル(D3)が記憶される。
・労働データ管理ファイル(D1)には、労働者の給与日と、労働者が提供した労働を(提供ごとに)表す労働データが格納される。
・給与データ管理ファイル(D2)には、労働データに基づいて順次算出された累積給与データと、労働者にすでに交付されている金額を表す金額データが格納される。
・資金データ管理ファイル(D3)には、労働者が指定した希望日を表す希望日データと、労働者が振込を希望する金額を表す資金データが格納される。
◆労働者からの振込金額等の指定
・労働者は、携帯電話やパソコンなどの労働者端末から、希望日データと資金データを送信すると、これらのデータが、インタフェース(B1)を介して銀行コンピュータ(B)に入力され、資金データ管理ファイル(D3)に格納される。
◆労働データの管理
・労働者が提供した労働を表す労働データは、労働状況管理コンピュータから、インタフェース(B1)を介して銀行コンピュータ(B)に入力され、このデータが、労働データ管理ファイル(D1)に格納される。
◆希望日における処理
・処理装置(B3)は、
 −希望日時点で資金交付可能な金額を、すでに交付済みの資金データと累積給与データとから求め、労働者が振込を希望する金額が、この交付可能な金額の範囲内かどうかをチェックし、
 −範囲内である場合、労働者の口座に希望金額を振り込むとともに雇用者口座から対応する金額を引き落とし、
 −範囲を超える場合、希望金額の振り込みを拒否するか、又は交付可能な金額を振り込むとともに雇用者口座から対応する金額を引き落とし、
 −今回の振込分を給与データ管理ファイル(D2)の金額データに反映させる。
◆給与日における処理
・処理装置(B3)は、
 −累積給与データのうち、資金交付されていない金額を労働者の口座に振り込むとともに、雇用者口座から対応する金額を引き落とす。