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チョッとひと息
X 駐車場管理システム
 〜フロア毎に異なる料金体系・・・これを特許で守れますか?〜
(2007.2.15)
 
 
タイトル5 人為的取り決めや単純なシステム化は特許にならない
 フロア毎に異なる料金設定をした立体駐車場。このアイデアについて特許を取得し、他の駐車場との差別化を図ったり、他の駐車場にライセンス提供したりすることはできるでしょうか?
 結論から言うと、「そういうことは、基本的にできない」ということになります。
 これは、特許法が、「自然法則を利用していること」を特許要件の1つとして定めており、上記のようないわゆる「人為的取り決め」、「運用ルール」といったものは、この要件を満たしていないものと判断されるからです。また、コンピュータを用いて、このような「取り決め」を実現すれば、そのコンピュータ・システムは自然法則の利用の要件を満たすことになりますが、フロア毎に異なる料金体系に基づいてユーザに料金を表示し、精算するといった単純なシステムでは、いままでの運用を単にコンピュータ化したに過ぎないとして、今度は、進歩性の要件を満たさないと判断される可能性が高くなります。
 ところが、平成12(2000)年4月にオープンした、JR平塚駅前の立体駐車場「ダイレクトパーク」では、駐車場のフロア毎に料金体系を変える「階層別料金」が導入され、これについて特許が成立しているという噂を耳にしました。いったいどうなっているのでしょうか。問題の「ダイレクトパーク」の仕組みと、これに関する特許(特許第3430200号「駐車場管理装置」)を覗いてみることにしましょう。
タイトル5 「ダイレクトパーク」のしくみ
 「ダイレクトパーク」は、駐車場の出入り口にゲートがない、いわゆるゲートレスの駐車場です。
 いままでの駐車場は、駐車場の入口と出口にそれぞれゲートが設けられ、入場の際には、入口のゲートで停車して入場時刻が記録された駐車券を受け取り、出庫の際には、出口のゲートで停車して、あらかじめ精算済みの駐車券を提示するかまたは、そこで精算を行うといった方式のものが主流です。
 しかし、この方式では、ゲートの手前で一旦停車して手続きや処理を行う必要があるため、そこで渋滞が発生しやすくなります。
 ダイレクトパークの方式では、ゲートがないため、そのような渋滞が発生しないというわけです。
 ここでは、ユーザが「ダイレクトパーク」を利用する場合の手順を、下図を参照しながら、フェーズごとに説明します。
 
◆入庫フェーズ
・ユーザは、各フロアに複数設けられた駐車ます(駐車スペース)の1つに車両を駐車し、駐車ます毎に設けられている駐車券ホルダから駐車券を抜き取る。
・システムは、在車センサが駐車ますへの駐車を検知し、かつ、駐車券ホルダが駐車券の抜き取りを検知すると、車両ロック装置を作動させて(たとえば、ロック板を上げて)車両が移動できないようにロックする。
 
◆精算フェーズ
・ユーザは、(たとえば、駐車場1階に設置されている)駐車料金精算機に駐車券を挿入し、精算処理を行う。
 
◆出庫フェーズ
・ユーザが、精算処理済みの駐車券を駐車ますの駐車券ホルダに挿入した場合に、システムは、精算がされたかどうかを確認し、精算済みであれば、車両ロック装置のロックを解除する(たとえば、ロック板を下げる)。
・ユーザは、ロックの解除後、駐車ますから車両を出庫する。
 
 
駐車場管理システム
タイトル5 「ダイレクトパーク」に関する特許の内容
 「ダイレクトパーク」に関する特許第3430200「駐車場管理装置」の特許請求の範囲(請求項1)は、根本的に、ゲートレスの駐車場システムを実現する構成で、以下のような記載となっています。なお、符号はこちら側で便宜上付与したものです。
 車両1台分の駐車スペース毎に区画された複数の駐車ますを有する自走式駐車場を管理する駐車場管理装置であって、
・1 前記駐車ます内の車両を検知する在車センサと、
・2 前記駐車ます内の車両をロックする車両ロック装置と
・3 前記駐車ます毎に備えられた駐車券ホルダと、
・4 前記駐車券ホルダに抜き差し可能であり、前記駐車ます毎に異なる識別情報が記録された駐車券と、
・5 前記駐車券の前記識別情報を読取り、精算処理を行う駐車料金精算機と、
・6 前記在車センサ、前記車両ロック装置、前記駐車券ホルダ、及び前記駐車料金精算機に接続され、前記駐車場全体を統括して制御するシステム制御部とを備え、
・5’ 前記駐車料金精算機は、駐車料金の精算処理を完了すると精算済み信号を前記システム制御部に出力するものであり、
・6’ 前記システム制御部は、前記在車センサからの車両検知信号と、前記駐車券ホルダからの駐車券抜き取り信号とを共に受けたときに、前記車両ロック装置により前記駐車ます内の車両をロックする一方、
・6'' 前記駐車券ホルダからの駐車券挿入信号を受けたときに、当該駐車券ホルダに対応する駐車ますについての精算済み信号を前記駐車料金精算機から受けていた場合に、前記車両ロック装置による車両のロックを解除する
ものである駐車場管理装置。
 「ダイレクトパーク」の利用手順を図を参照して説明しましたが、特許権の厳密な権利範囲は、この請求項1に基づいて判断されます。他社は、正当な権原なく、これと同様の構成の駐車場システムを導入することはできません。
タイトル5 フロア毎に料金体系を変える仕組みはどこに?
 上記請求項1では、フロア毎に料金体系を変える仕組みは定義されていませんでしたが、実は、この仕組みは、実質的には請求項7に定義されているのです。請求項7は請求項6の従属項であり、請求項6は請求項5の従属項であり、さらに請求項5は請求項1の従属項になっています。従属項とは、一般的には、それが従属する元の請求項の範囲をさらに限定して定義する請求項のことです。特許権の侵害の是非は、最も広い権利範囲(請求項1)を基準に考えればいいわけですが、このように従属項を作って階層的に権利を定義することは、出願審査の段階や侵害訴訟等において、ある程度の意味を有しています。
 
 つまり、請求項7の範囲は、請求項1の範囲に含まれ、この範囲をさらに限定したものであるということができます。請求項5、請求項6、請求項7は、以下に示すとおりです。請求項1−>請求項5−>請求項6−>請求項7の順に、権利範囲が限定され狭くなっていきます。
(請求項5)
 請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の駐車場管理装置であって、
・1 前記システム制御部は、前記駐車券抜き取り信号を受けた時刻を入庫時刻として登録するものであり、
・2 前記駐車料金精算機は、
・2a 該駐車料金精算機に挿入された駐車券の識別情報から駐車ますを特定し、該特定された駐車ますに対する車両の入庫時刻を前記システム制御部に問い合わせて設定する一方、
・2b 前記駐車券の挿入されたときの時刻を精算時刻として設定し、前記入庫時刻と精算時刻から駐車時間を求め、該駐車時間に応じた駐車料金を精算する
ものである駐車場管理装置。
(請求項6)
 請求項5記載の駐車場管理装置であって、
・1 前記駐車料金精算機は、前記駐車料金を、前記駐車時間と、料金体系テーブルとを参照して計算するものであり、
・2 前記料金体系テーブルが、前記システム制御部に接続又は前記システム制御部内に設けられた駐車料金体系設定部により、任意の駐車料金に設定された
ものである駐車場管理装置。
(請求項7)
 請求項6記載の駐車場管理装置であって、
・1 前記料金体型テーブルが、前記駐車ますの場所に応じて異なる駐車料金が設定された
ものである駐車場管理装置。
タイトル2 重要なポイント
 請求項7は、「駐車ますの場所に応じて異なる駐車料金が設定され」とありますから、フロア毎に料金体系を変えるという概念よりも広い概念になっています。たとえば、「場所に応じて」ですから、1フロアのなかで、エレベータに近い駐車ますの駐車料金を高く設定し、遠い方を低く設定するといった設定も請求項7の範囲に含まれます。
 前述の通り、請求項7の範囲は、請求項1の範囲を限定したものであり、フロア毎、場所毎に料金体系を変える仕組みは、ここでは、ゲートレスの駐車場システムのなかに組み込まれた形で特許(請求項7)として成立しており、その仕組みそのものが、単独の特許として成立しているわけではないのです。
 逆に言えば、請求項1に示した構成とは全く異なる駐車場システムであれば、フロア毎、場所毎に料金体系を変えることが自由にできるということになります。たとえば、携帯電話、PDA、ICカード等を用いて駐車券ホルダへのアクセスと精算処理を行い、駐車料金精算機を設置しないようなシステムを用いれば、この特許権に抵触することなく、フロア毎、場所毎に料金体系を変えて駐車場を運営することが可能になるでしょう。
タイトル2 おまけ
 JPOニュース No.29, 2001によれば(JPOは、Japan Parking facilities promotion Organization)、この「ゲートレスパーク」では、2階〜4階が100円/20分、5階〜7階が100円/30分、8階が100円/60分と設定されており、階層別修正回転率は、各階の平均が約7回転、8階が約20回転となっているそうです。
 そして、利用単価は、結局、料金が安い高層階ほど高くなっているとのこと。価格が安いということで、つい利用時間が長くなってしまい、却って、低層階より多くの駐車料金を払うことになってしまっているのではないかとの推測がされています。
 また、上層階にまで、絶えず人の流れができているために、駐車場にありがちな車上荒らしの防止にもなっているそうです。