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チョッとひと息
T  飲食店における顧客の高回転率誘導方法
 〜システム化できる部分で特許を取得せよ!〜
(2005.9.9)
 
 
タイトル5 ビジネスモデルの概要
 オフィス街の昼時、飲食店は多くの会社員で一杯になります。飲食店側としては、食事を済ませた顧客は、なるべく早く出ていってもらいたいというのが本音ではないでしょうか。その分、顧客の回転率が上がり、売上が多くなるからです。
 そこで、食事時間の短い顧客ほど、支払額を低くして高回転率を誘導するようなビジネスモデルを考えてみました。こうしたサービスによって、顧客の1回あたりの滞在時間が短くなることが期待でき、割引率を適切に設定すれば、訪問客数の増加によって売上の増大を見込むことができます。また、顧客の平均滞在時間が短くなれば、行列が出来ていても敬遠されにくく、確実に所定数の顧客を確保できるというメリットなども考えられます。
(このビジネスモデルは、ブライトビジョン特許事務所が独自に発想したものです)
 
 ここで、単純な昼時におけるモデルを考えてみます。
 ・昼休みは、11時30分から13時30分までの2時間。
 ・店の席数は20で、定食は通常800円。
 ・顧客の平均滞在時間は30分であり、そのうち、25分が実質的な食事時間で、5分が注文・調理の時間である。
 
<ケース1> そうすると、通常は、昼休みに顧客が4回転することになるので、80人(20席×4回転)×@800=64,000円の売上となります(下図、上段のケース)。
<ケース2> 食事時間が15分以内であった場合に食事代を2割引きにするとして、全ての顧客が20分の滞在時間であったとすると、2時間の昼休みに6回転となるので、120人(20席×6回転)×@640=76,800円の売上となります(下図、中段のケース)。
<ケース3> さらに、食事時間が10分以内であった場合に食事代を3割引きにするとして、全ての顧客が15分の滞在時間であったとすると、2時間の昼休みに8回転となるので、160人(20席×8回転)×@560=89,600円の売上となります(下図、下段のケース)。
 ・ケース3の「10分」の食事時間は、時間が短く現実的でないかもしれませんが、ケース2の場合では、売上が20%増加することになります。
アイデア1
注1) ただし、このような割引制度によって、漫然と「長居」する一部の顧客には早期に退出させるインセンティブが働くと予想されますが、全ての顧客が割引を受けようと行動する保証はありません。また、もとから滞在時間の短い顧客については実質的な減収となります。さらに、この制度は、繁盛店でないと却って損失が発生することにもなりますので、制度の妥当性や割引率の設定についてはさらなる検討・検証が必要でしょう。ここでは、単にサンプルとして提示したに過ぎません。
 
タイトル4 店舗における手順
 上記のようなビジネスモデルを、全て人手によって行う手順は(一例にすぎませんが)、以下の図のようになります。図は、その店舗における顧客、店員、料理人のそれぞれについての動作をフローチャート風に、時間の経過に沿って表したものです。

手順1
(1) 最初に、顧客からの注文を店員が受け、それを料理人に伝えます。
(2) 料理人が料理を完成させると、店員は、それを顧客に運び、そのときに、顧客に料理が渡された時間をメモ等に記録します。
(3) 顧客の食事が終わり、店員に精算を要求すると、店員は、その時間をメモ等に記録します。
(4) さらに、店員は、メモした2つの時間から、顧客が食事に費やした時間を計算し、その食事時間に基づいて支払額を決定します。たとえば、食事時間が10分以内であれば通常価格から3割引し、15分以内であれば、2割引にします。
(5) 店員は、決定した支払額を顧客に提示し、精算します。
タイトル3 特許出願の視点
 上図に示した手順の例では、注文から支払に至るまで、全て人手を介して行われていますので、このようなビジネスモデルを考えついたとしても、特許権で保護することはできません。発明が「自然法則を利用」していることが特許付与の要件であり、人間同士の約束事や人間の動作のみでは、この要件を満たすことができないからです。
 しかし、いずれにせよ、現代では、こうした人手のみの手順は現実的でなく、通常は、これらの手順の少なくとも一部がコンピュータ化(システム化)されるのが普通です。そして、そのシステム化された部分こそが、特許権で保護されうる部分となるのです。これは、特許庁が、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合に、「自然法則の利用」であると認めたことによるものです。
 
 このような特許が、いわゆる「ビジネスモデル特許」、「ビジネス方法特許」と呼ばれているものです。しかし、この特許は、実質的には、ソフトウエアによる情報処理を実現するものであり、その意味では、従来の「ソフトウエア特許」であるということもできるのです。
 
 ここで、仮に、このシステム化された部分について特許が取得できたとしても、上図のように、全てを人手で実現する第三者については特許権に基づく権利行使ができず、そのビジネスモデルの実施を許してしまうことになります。しかし、上述したように、人手のみでこの手順を行うのは現実的でないため、実質的には、特許権者が、このビジネスモデルの実施を独占できることになります。
タイトル3 一部をシステム化したビジネスモデルの手順
 それでは、ここで、一部にコンピュータを導入してシステム化した同様のモデルについての手順を見てみましょう(下図)。
手順2
(1) 最初に、顧客からの注文を店員が受け、それを料理人に伝えます。
(2) 料理人が料理を完成させると、店員は、それを顧客に運び、そのときに、顧客に料理が渡された時間を「システム」に入力します
(3) 顧客の食事が終わり、店員に精算を要求すると、店員は、その時間を「システム」に入力します
(4) さらに、店員は、「システム」を操作して、その顧客の支払額を表示させます(「システム」は、店員から指示があると、入力された2つの時間から、顧客が食事に費やした時間を計算し、その食事時間に基づいて支払額を求めます)
(5) 店員は、「システム」が表示する支払額を顧客に提示し、精算します。
 この例では、コンピュータ・システムが、2つの時間(すなわち、顧客の食事開始時間と食事終了時間)を受信し、指示があったときに、その2つの時間に基づいて、支払額を計算するものであり、したがって、この「システム」が特許出願の対象となります(上図の点線で囲んだ部分)。
 システムは、2つの時間の差から、割引率を選択して最終的な支払額を決定するといった比較的一般的な情報処理なので、これに特許性があるのかと考えられる方も多いと思いますが、こうした情報処理により一定の有利な効果があり、さらに、類似の処理を行う先行技術がなければ、特許として認められる可能性は低くないでしょう。ただし、(実際には、人手で行うことは非現実的ですが)、このシステムが、単に、「人間が行っている業務のシステム化」であると判断されてしまう可能性もありますので、注意が必要です。
タイトル 留意点
(1) 上のように、ビジネスモデルの実現に必須の「システム」について特許権を取得することにより、そのビジネスモデルの実施権を独占することができるのですが、実は、この例の場合は、それだけでは十分ではありません。
 それは、手順やハードウエア構成を変更して、別のシステムで同様のビジネスモデルを実現することができる「余地」があるからです。構成の異なる他のシステムを使った場合は、たとえ上図のシステムを特許化したとしても、その特許権の権利範囲に属せず、権利侵害とならないのです。
 したがって、ビジネスモデルについて有効な特許の取得を目指すには、手順やハードウエア等に関するバリエーションを、将来予想される形態も含めて(ただし、ビジネスとして成り立ちうる現実的な範囲で)網羅する権利範囲を定義することが重要です。
(2) 考えられる他のシステムを網羅的に定義するには、このシステムについての変形のバリエーションをブレーンストーミング等によって洗い出すことが有効です。こうして得られた変形例の全てを明細書に記述し、かつ権利範囲に含むよう定義できれば、後々の事業を有利に展開することができるでしょう。ほんの一例に過ぎませんが、変形例には、たとえば以下のようなものがあります。
・食事代を一定額の前払いとして、後で割引分を返すような手順を実現するシステム。
・顧客が自動販売機で最初にチケットを購入するようにし、店員は、磁気ライター等で2つの時間をそのチケットに記録し、精算時に、レジスター等でチケットの記録から2つの時間を読み取り支払額を計算するようにするシステム。
・上記チケットの代わりに、プリペイドカード、ICカード、携帯電話等を利用して2つの時間を管理するシステム。
・2つの時間の入力を、店員の持つポータブル機器等から行うようにするシステム。
・食事の時間を、たとえば分単位、数分単位に管理し、割引の段階を細かく管理するシステム。
・顧客の入店ペースや、行列の人数を把握し、その数に応じて割引率を動的に変化させるシステム。
・注文から料理の提供までにかかった時間を把握し、その時間が長いほど、割引率を高くするシステム。
・ゲーム的な要素を取り入れ、ランダムに、または所定の条件に基づいて割引率を決定するシステム。
・天候や季節など、自然環境に基づく情報に応じて割引率を決定するシステム。
・支払額の割引という形態ではなく、顧客のポイントを加算したり、条件を何回かクリアすると所定のサービスを受けられるようにするシステム。