バナー1
HOME WHAT'S NEW LINK SITE MAP
ブライト LIBRARY
ブライト FOCUS
チョッとひと息
V  409特許の無効審判の概要
(2006.3.14)
 
 
 ANAは、JALIの提訴を受け、2005年2月25日に409特許の無効審判を特許庁に請求する。その後、特許庁から無効理由通知が示され(2005年10月5日)、これに対しJALIは、実質的に補正を元に戻す訂正請求書を提出する(2005年11月4日)。最終的には、特許庁から、請求(無効審判の請求)は成り立たない旨の審決が下され、その後、審決確定に至り(2006年5月31日)、409特許は存続することとなった。
 
(1)請求の理由
◆理由1
 特許法第29条2項(特許法第123条第1項第2号) 進歩性の欠如:請求項1、2に係る各特許発明は、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明、並びに周知及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
  ・特開昭63-173159号公報
  ・特開平8-96050号公報
  ・JAS「スカイコートPorte」に関する記事(日経マルチメディア1998年6月号、P20-21)
◆理由2
 特許法第29条2項(特許法第123条第1項第2号) 進歩性の欠如:請求項1、2に係る各特許発明は、本件出願前に公然知られた発明、並びに周知及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
  ・JAS「スカイコートPorte」に関する記事(日経マルチメディア1998年6月号,P20-21)
  ・ANAの従来システム「able-Q」に関する記事(ANA Travel Flyer vol.1)
  ・JALのチェックインシステム「JALPAS/D-II」に関する記事(三菱電機技報 Vol.68,P52-57)
◆理由3
 特許法第17条の2第3項(特許法第123条第1項第1号) 新規事項の追加:本件特許の出願手続きにおいてなされた手続補正は、出願当初の明細書等に記載された事項の範囲を超えた補正であり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
◆理由4
 特許法第36条第6項第2号(特許法第123条第1項第4号) 特許請求の範囲の記載要件不備:請求項1、2に記載された発明は不明確であり第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
 
(2)無効理由通知書の内容
 特許庁は、被請求人(JALI)が2001年3月1日付けでした補正に関連して3つの無効理由を示している。無効理由の概要は以下のとおり。無効理由は、請求人(ANA)が指摘した、上述の理由3、理由4と一部共通する。また、請求人の指摘した進歩性の欠如については判断をしていない。
◇理由1
 2001年3月1日付けの手続補正書によって補正された事項は、本件特許の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものである。
  ・請求項1に関する補正の概略は以下のとおり
 ・出願時 ・補正(2001/3/1)
・A4 ID情報が記録されたID記録媒体と、・A4' 各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報が記録されたID記録媒体と、
・B1 搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関毎のID情報を表示して航空券予約申請を行う予約申請機能を有し、・B1' 搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関毎の及び当該ユーザ機関内の利用者個人のID情報を表示して航空券予約申請を行う予約申請機能を有し、
・C2 成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示された利用者個人のID情報とを空港の搭乗券発券機に送信する待機指令機能と、・C2' 成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示された利用者個人のID情報とを空港の搭乗券発券機に送信する待機指令機能と、
・D2 読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信されたID情報とを照合する照合機能と、・D2' 読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信された利用者個人のID情報とを照合する照合機能と、
  ・上述の補正内容は、実質的に、「ID情報」または「利用者ID情報」を「利用者個人のID情報」に訂正するものである。A4についても同様である(第1回口頭審理調書)。ここで、「ID情報」、「利用者ID情報」のそれぞれは、当初明細書等の記載から「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」を意味すると認められる。そうすると、補正後のD2’で定義されるように、搭乗券発券機は、ID記録媒体から読み取ったID情報を、ホストコンピュータから受信した「利用者個人のID情報」と照合することになる。
 しかしながら、当初明細書等には、搭乗券発券機が、ID記録媒体から読み取ったID情報を「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」または「各ユーザ機関毎のID情報」と照合することは記載されているが、「利用者個人のID情報」と照合することについては記載がない。
 したがって、当該補正事項は、当初明細書等に記載された事項の範囲内のものではない。
◇理由2
 本件特許の請求項1、2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した発明でないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。
  ・請求項1に記載の本件発明1においては、搭乗券発券機は、ホストコンピュータから受信する「利用者個人のID情報」と、ID記録媒体から読み取った「利用者個人のID情報」を照合するが、発明の詳細な説明には、入力、送信、照合等がなされる情報は「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」であって、「利用者個人のID情報」だけで照合等が行われることを示唆する記載はない。
◇理由3
 本件特許の請求項1、2に係る発明は、下記の点が明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものである。
  ・「各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報」と「利用者個人のID情報」は、同じ意味であるにも関わらず異なる用語となっており明確でない。
  ・ID記録媒体には「利用者個人のID情報」が記録されており、一方、搭乗券発券機が「ID記録媒体」から読み取る情報は「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」であり、矛盾がある。
 
(3)無効審判の行方
 ・すべては、2001年3月1日の補正に端を発している。この補正が新規事項であると判断され(理由1)、その補正による記載によって理由2、理由3が生じている。
 ・被請求人は、この無効理由通知に応答して、意見書および訂正請求書を提出している。意見書では、特に審判官の認定内容については争わず、請求項1、2を訂正することにより特許の維持を試みている。訂正請求書では、「利用者個人のID情報」の記載等を「各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報」に変更し、実質的に出願当初の内容に戻す訂正を請求している。
 ・しかしながら、補正により、「利用者個人のID情報」との限定をして特許権を得ながら、これを訂正請求により「各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報」と変更することは、実質的に特許請求の範囲を拡張するものと考えられ、特許請求の範囲の減縮を目的として訂正を認める特許法第134条の2の規定に違反するとして訂正請求が認められない可能性が高い。そのため、現段階では、本件特許権を維持するのは極めて厳しい状況であると言わざるを得ない。