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チョッとひと息
U  409特許の概要
(2006.3.13)
 
 
 2004年7月23日、JALIによって提起された特許権侵害訴訟は、2つの特許権(409特許と447特許)の侵害について争うものである。そのため、訴訟では、各特許権が有効か否か(すなわち、無効理由を有しているかどうか)、およびANAの提供するサービス「ANA@desk」が各特許権の権利範囲に属するか否かが大きなポイントとなる。ここでは、409特許で定義された搭乗券発行システムの構成および処理内容について概観してみる。
 
チケット
(1)409特許の権利範囲
 特許権の権利範囲は、第一義的には、特許公報に記載されている「特許請求の範囲」に基づいて定められる。409特許では、搭乗券発行システムを定義した請求項1に係る発明(第1発明)、およびその第1発明をさらに限定した請求項2に係る搭乗券発行システムである発明(第2発明)が定義されている。上述の特許権侵害訴訟では、第2発明に基づく権利主張はされていない。第1発明は以下のように分説できる。
・A1 航空券予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関に設けられたホストコンピュータと、
・A2 各ユーザ機関に設けられた汎用パソコンと、
・A3 空港に設けられた搭乗券発券機と、
・A4 各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報が記録されたID記録媒体と、
を備え、
・B 各ユーザ機関の汎用パソコンは、
  B1 搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関及び当該ユーザ機関内の利用者個人のID情報を表示して航空券予約申請を行う予約申請機能を有し、
・C 搭乗券発行機関のホストコンピュータは、
  C1 汎用パソコンからの航空券予約申請に基づいて航空券予約を成立させる予約受領機能と、
  C2 成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示された利用者個人のID情報とを空港の搭乗券発券機に送信する待機指令機能と、
  C3 搭乗券発券機から送信される搭乗券の発券結果情報を蓄積する情報蓄積機能と、
  C4 前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関のID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能と、を有し、
・D 空港の搭乗券発券機は、
  D1 ID記録媒体の入力を通じて利用者ID情報を読取るID読取機能と、
  D2 読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信された利用者個人のID情報とを照合する照合機能と、
  D3 照合した結果に基づいて対応する航空券予約情報に基づく搭乗券を発券する発券機能と、
  D4 搭乗券発券の事実をホストコンピュータに送信する発券結果送信機能とを有する、
ことを特徴とするID情報利用の搭乗券発行システム。
  
◇次に、第1発明で定義された搭乗券発行システムの概要を、下の図を参照して分かり易く解説する。ここでは、システムを理解し易いように、システムの各処理を簡略化された図と、多少かみ砕いた表現で説明するが、実際の権利範囲の認定は、あくまでも「特許請求の範囲」の記載に基づいて行われる。
JALシステム
・第1発明の搭乗券発行システムは、搭乗券発行機関に設けられたホストコンピュータ(A1)、各ユーザ機関に設けられた汎用パソコン(A2)、空港に設けられた搭乗券発券機(A3)、及びID記録媒体(A4)を含む。
◆予約フェーズ
・汎用パソコン(A2)で、ID情報が表示(入力)され、航空券の予約申請が行われると(B1)、ホストコンピュータ(A1)が当該申請を受領し、この申請に基づいて航空券予約を成立させる(C1)。
・次に、ホストコンピュータ(A1)は、成立した航空券予約の情報と、予約申請のために表示されたID情報を、搭乗券発券機(A3)に送信する(C2)。
◆発券フェーズ
・搭乗券発券機(A3)は、予約申請をしたユーザ機関の社員がID記録媒体を挿入したときに、そこからID情報を読み取り(D1)、そこで、読み取ったID情報と、ホストコンピュータ(A1)から送信されたID情報とを照合し(D2)、たとえば、そのID情報が一致したら、航空券予約情報の内容に応じた搭乗券を発券する(D3)。
◆精算フェーズ
・搭乗券発券機(A3)は、発券が終了したら、その事実(発券結果)を、ホストコンピュータ(A1)に送信する(D4)。
・ホストコンピュータ(A1)は、搭乗券発券機(A3)から送信された発券結果を蓄積し(C3)、この蓄積された情報により、ユーザ機関毎の請求額を算出する(C4)。
 
(2)システムで使用される「ID情報」は何か?
 上述したシステムの解説では、利用者個人やユーザ機関を識別するためのデータを単に「ID情報」として説明したが、この「ID情報」について、より具体的に検討する。第1発明に係るシステムの各処理で扱われる「ID情報」の内容は、「特許請求の範囲」の記載、他の明細書・図面の記載、および審査・無効審判等において示された出願人の意図に基づいて解釈される。
◆汎用パソコンに表示(入力)されるID情報
 請求項1のB1には、「各ユーザ機関及び当該ユーザ機関内の利用者個人のID情報を表示して」とある。一方、明細書の「発明の詳細な説明」の欄の記載によれば、「ID情報」は「利用者ID情報」のことであり、「利用者ID情報」は、「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」のことである。
 したがって、これらのことから、汎用パソコンには、「利用者個人のID情報」と、その利用者個人が属する「ユーザ機関のID情報」の2種のIDが表示され、例えば、以下の図のような航空券予約申請画面を想定することができる(日時や便名等、他の入力項目は省略)。
ID情報イメージ2
◆ホストコンピュータから搭乗券発券機に送信されるID情報
 請求項1のC2には、「成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示された利用者個人のID情報とを搭乗券発券機に送信する」と記載されている。ここでは、特に「利用者個人のID情報」とあるから、この情報「のみ」がホストコンピュータから搭乗券発券機に送信される。
◆ID記録媒体に記録されているID情報
 請求項1のA4には、「各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報が記録されたID記録媒体」と記載されている。「利用者ID情報」の示すところは上述したとおりであるが、「第1回口頭審理調書」の記載から、出願人は、ID記録媒体には「利用者個人のID情報」のみが記録されているという認識を有していることが伺える。イメージとしては以下の図のようになる。
ID情報イメージ3
◆搭乗券発券機において照合されるID情報
 請求項1のD2には、「読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信された利用者個人のID情報とを照合する」と記載されており、「第1回口頭審理調書」にもそのことが記載されている。
 したがって、ここでは、ID記録媒体から読み取られた「利用者個人のID情報」と、ホストコンピュータから送信されてきた「利用者個人のID情報」とが比較され、照合される。
 
・以上のことから、第1発明に係るシステムの各構成要素において使用されるID情報は、以下の図のようなイメージになる。ここで、「COMPANY0033」はユーザ機関を識別するための「ユーザ機関のID情報」の例であり、「USER001」は利用者個人を識別するための「利用者個人のID情報」の例である。利用者「USER001」はユーザ機関「COMPANY0033」に属する社員である。
 なお、汎用パソコンからホストコンピュータに送信されるID情報は、明細書の記載によれば、「利用者個人のID情報」と「ユーザ機関のID情報」である。請求項1のC2から、「利用者個人のID情報」がホストコンピュータに送信されていることは間接的に伺える。一方、「ユーザ機関のID情報」の送信については、一応図示しておくが、特許請求の範囲には記載されておらず、権利内容とは関係がない。
ID情報イメージ4